2009/01/13

虚構機関

大森望、日下三蔵(編)『虚構機関 ―年刊日本SF傑作選—』(創元SF文庫)東京創元社、2008年

前回(2008年1月11日の記事)に引き続いて、軟らかめの本についての記事を書いてみた。ただし、こちらの分野はSF。

SFは昔は結構読んでいたのだが、ここ何年かはずいぶんと読む量が減ってきている。傾向としては昔も今も海外作品の翻訳物が大半を占めていて、国産SFにはあまり手を出す機会はない。日本のものがつまらないわけではない。ひょっとしたら、小学生の頃に学校の図書室で子供向けの海外SF全集みたいなものを読んでいたからなのかもしれない。要は、これという理由があってのことではない。

本書は2007年に発表された日本の短編SFアンソロジー。自分の読書傾向からは思いきり外れるものだが、なぜそうなったのかは、これもまた明確な理由・動機があるわけではない。単なる気まぐれ。

収録されているのは16作品。それらは編者がなんらかの意味でSFと考える作品とのこと。SFに親しんでいる人であればともかく、SFといえばハリウッド映画的な作品しか馴染みがない人にとっては、こういうのもSFなのかという、意外なというか新鮮な印象をもつのかもしれない。

別に国産SFに限ったことではないのだが、近年の作品はいわゆる自然科学の知識がないとついていけないものが多いように思う(ジャンルにもよるが)。まあ、サイエンス・フィクションと「サイエンス」が冠されている以上、当然というか仕方のないことなんだろうけども。

もっとも、これは単なる個人的な印象であり個人的な事情。昔の作品でも同じような傾向はあったはずなのに、「ついていけた」(気がした)のは、その当時の自分は自然科学分野の知識を吸収しようとしていたからだと思う。最近はSF以上に自然科学分野の本を読むことがめっきり少なくなった。ついていけないことが多くなった理由はそのあたりにあるんだろう。

もちろん、全体的な傾向(しかも私見、というよりも憶測に基づいている)がそうだからといって、全部が全部ついていけないわけではない。本書についてもそれはあてはまること。以下、いくつかの作品についての雑感を述べてみる。

小川一水「グラスハートが割れないように」(15〜71ページ)なんかは、殊更に自然科学に通じていなくても問題はない。読んでいくうちに、なんかどこかで聞いたことのある話だなと思った。すると、kikulogのこんな記述を突然思い出した。

以前もとりあげたように、これはど真ん中の「水伝」小説です。発表媒体がSFJapan誌だったので、あまり人目に触れなかったかもしれませんが、この文庫に収録されたことで、いつでも読めるようになりました。

SF大会で山本弘・堺三保両氏とのトーク企画をやった際、小川さんがわざわざ挨拶に来られ、「水伝」についてはこのブログを参考にしたと言っていただきました。細々とでも主張し続けるのは大事ですね。「水伝」という名前は作品のどこにも出てきません。しかし、だからこそ、「水伝」信者のかたの目にも触れるかもしれません。

未読のかたはぜひこの機会に

——kikulog:虚構機関 - 年刊日本SF傑作選 (大森・日下編、創元SF文庫)(2009年1月1日)

この記事は読んでいたはずなのに、本作を読むまですっかり忘れていたとは焼きが回ったとしかいいようがない。それはともかく、ブログ主が書いているように、広く読まれて欲しい作品。内容も難解ではないことだし。

北國浩二「靄の中」(139〜168ページ)はSFとミステリ、アクションが相互乗り入れしたような作品で、本書の編者曰く「平井和正の古典的名作『死霊狩り(ゾンビー・ハンター)』の流れを汲む作品」。語弊があるかもしれないが、SFアクション映画っぽいテイストの作品(べつに文句をつけてるわけではない)で、SFに馴染みのない人にとっては敷居が低いかもしれない(べつに批判してるわけではない)。

林譲治「大使の孤独」(405〜439ページ)は本書唯一の宇宙もの。既刊の短編集『ウロボロスの波動』(ハヤカワ文庫JA、2005年)と長編『ストリンガーの沈黙』(ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション、2005年)と同じシリーズの作品。個人的にファースト・コンタクトものが好きなもので(正確には本作は「ファースト」ではないが)。

最後の作品は、伊藤計劃「The Indifference Engine」(441〜500ページ)。内戦が終わったばかりのアフリカの架空の国が舞台で、時代としては現実と地続きの現在から半歩か一歩先の近々の未来(というか将来)といった感じ。少年兵が主人公で、どことなく『カラシニコフ』(2008年12月16日の記事)の世界を彷彿とさせる。SFはどうも、という人にとっては、一番取っつきやすいかもしれない。

編者の解説によれば、国産SFにはアンソロジー自体はもちろんのこと、年刊ベストアンソロジーというのも数は少ないとのこと。今後も継続していく予定らしいので、短命に終わらないことを願う。

関連(してそうな)書籍

  • 日下三蔵『日本SF全集・総解説』早川書房、2007年
  • 日下三蔵(編)『日本SF全集 全六巻』出版芸術社【全巻構成

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